横浜市立師岡小学校
更新日:2024.07.30
3つの思いが込められた「MOROOKA ドライ」
横浜市立師岡小学校では、子ども達が育てた野菜を乾燥(ドライ)野菜にして広めることで、野菜づくりに協力してくれた農家のみなさんの思いや、フードロスの問題を無くす努力をする大切さを多くの方に知ってもらうことができると考えました。日本には未利用の野菜がたくさんあり、その扱いに困っている多くの生産者がいます。
その未利用野菜を使い、乾燥(ドライ)野菜「YOKOHAMA Dry」を作って販売している合同会社グロバースの長谷川さんの協力のもと、長谷川さんから、「食品ロス」のこと、「食品ロス」を減らす取り組み、そして規格外野菜を「乾燥野菜」として販売することの良さについて学ぶことができました。
子ども達は、乾燥野菜づくりを通して「食品ロス」を減らすことの大切さを学び、横浜で野菜をつくる農家の方、それを食べる人、みんなが幸せになる社会にしていきたいという思いをもつようになり、自分たちの畑で採れた野菜(ジャガイモ・小松菜)や地域の農家で採れた規格外野菜(キャベツ)を乾燥させて「MOROOKAドライ」をつくりました。
この「MOROOKAドライ」には3つの思いが込められています。
①乾燥野菜や規格外野菜を知ってもらう、②規格外野菜も食べられるということを知ってもらう、③食品ロス自体を知ってもらう、の3つです。
今回の取組では、乾燥野菜をつくるために、福祉事業所の方々に野菜の乾燥作業や袋づめに協力してもらいました。子ども達が実際に行ったのは、袋のパッケージ作成だけでしたが、商品化して販売するまでに多くの方が携わっていることや、自分達の活動が食品ロスにつながっていることを学ぶことができました。
5年生の総合的な学習の時間では、「身近な『食』について考えよう」を学年の共通のテーマとし、外部講師を招いて、地産地消の大切さや生産・販売する方々の思いについて知りました。外部講師の方から地産地消の話を伺ってからは、「師岡小学校で野菜をつくりたい。」という思いがクラス内で強くなり、畑づくりを始めることになりました。
近隣の農家の方々に土づくりや野菜の育て方を学びながら、校内にある既存の畑を拡張して、小規模でしたが自分達で畑をつくることができました。畑をつくったり、作物を栽培したりする中で、農家の方から、「育てた野菜の7割しか販売できない」ことを教えていただき、少し葉が虫に食べられただけで出荷できないことや、広範囲に及ぶ畑の管理を数名の人で行っていることから、農家の方々の苦労を農作業の体験を通して知りました。
農作業の苦労や出荷できない規格外野菜があることを知ってからは、苦労して野菜を育ててきた自分達だからこそできることを考え、農家の方の悩みである「食品ロス」を減らすことを目的とした取組を行っていく学習の流れになりました。
子ども達にとって、野菜は身近なものであり、生活科の学習の経験から野菜を栽培することも容易なものという捉えがありました。しかし、実際に種から野菜を栽培することになると、収穫するまでの3、4か月の間、何度も畑の環境を整えたり、毎日水やりに行ったり、成長しない作物や病気の被害にあった作物への対処法を考えたりと様々な苦労がありました。畑で採れた野菜が食卓にならぶまでに、農家の方々の日々の苦労や、野菜づくりへの思いや願いを知ることができたことはとても良い経験となりました。
また、市場で販売できない規格外野菜の存在を知り、「食品ロス」を減らすために自分たちでできることを考えたり、販売できる方法を調べたりしました。グロバース長谷川さんから乾燥野菜として加工することで、規格外野菜を販売できることを知り、「食品ロス」を減らすこと、乾燥野菜にすると栄養価が高まること、自分たちの生活には多くの人が携わっていること、地産地消の取組に参画していくことなど大切なことを学ぶことができました。
担当の野村先生は、『学習のふり返りの中で、身近な食事、特に給食を残さないようにしたいとの意見が多く、「食品ロス」に感心を持つ子が学習を進めていく中で増えてきました。「食品ロス」という言葉を知識として理解するだけではなく、身近なことだけど考えるべきこととして受け止めるひとつの「きっかけ」となってもらい、学校だけでなく、家庭でも「食品ロス」を減らす取組をしていってほしいと願っています。今後は、今回の5年2組の取組を師岡小学校だけでなく、多くの場所で取り組めるように情報を発信出来たらいいなと考えています。栄養価も高い乾燥野菜が世の中に広まることで、「食品ロス」を減らすとともに、農家の方の悩みも減っていってほしいです。』と話します。